周南市戦没者遺族大会③

のつづきです・・・


 時に7月26日、またしても敵機来襲。「早く壕に入るように」と警備の人の叫び声を耳にする。娘と一緒に走る。壕まで間に合わず、近くの竹やぶにしゃがむ。

 米軍編隊機の低空飛行のすさまじい音が響き、「アレ!」

 飛行機頭上、「お母ちゃん!」と娘が傍で大きな声を出す。

 「静かに、静かに」と娘を抱き寄せる。その体に、弾が「ズシン!」

 「スミ子よ、スミ子よーう」

 飛行機の音が遠ざかる。娘は声を出さぬ。直撃を受けて死んでしまった。泣く涙も出てこない。

 あたりにも、娘と同じ幾人かを見る。隣保班の方たちが、担架を持って家まで運んでくださった。

 またしても葬式。わずかな月日の間に、肉親3人との死別。運命と言えども、何を考える余裕もない。明日の自分はどうして生きればよいのか…

 戦場にいる息子よ。お前のところはまだまだ恐ろしい大砲の音の連続だろうなぁ。内地でさえもこの有様。母の思いがあの子に通じるだろうか?

 心寂しさはこの上もない。一人ぼっちのこの私。途方に暮れる毎日。


 時に8月15日。戦争は終わりを告げ、身震いするほどの空襲の恐ろしさを忘れられないまま、増産に精励の通達。
 食糧生産物の供出や、農耕も人手を借りる。月や星を見ながら家に帰るのも常の事。がむしゃらに働き続ける。
 「息子よ、生きて帰って欲しい」という願いを込めて、本当に一生懸命働いた。


 昭和20年9月。薄汚れた軍用毛布を背負い、痩せこけた目のくぼんだ男が戸口に立つ。

 「この家は焼けなくてよかったね…」
 「あなたは誰?」

 何と!徳山駅で下車し、焼け野原となった街を疲れ切った体で徘徊して、やっとたどりついた息子ではないか。

 「よう帰ってきた。よう帰ってきた。」
 一瞬、言葉の出しようもない。抱き合う2人。久しぶりの対面。溢れる涙は互いに止まらない。



つづく・・・
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ふじいりつ子

Author:ふじいりつ子
山口県議会議員

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