沙羅の木 ②

 岩城満さんからお電話を頂いた直後、奥様が私を訪ねて来られました。

「夫が、『とにかくりつ子さんの所へ行って来い』と言うので、相談に来ました。」
とおっしゃっていましたが、本当は、妻としてひと時も離れず、ずっと傍に付いていたい時であったと思います。
 そのためあわただしいものとなりましたが、それが私と奥様の初めての出会いでした。

 数日後、奥様から
「夫が亡くなりました」
というお電話を頂きました。

 私は、ショックでしばらく動くことができませんでした。

 葬儀が終わった後、奥様の克枝さんが再び事務所に来られました。ご主人が亡くなられた直後であるのに、毅然とした態度だったことをよく覚えています。

 きっと「遺志を継がなくては・・・」という一心だったのでしょう。


 そして年が明け、2011年4月。山口県で初めての民間の母子生活支援施設「沙羅の木」が、山口市に開設されました。

「沙羅の木」竣工式にて。隣は、オレンジリボン支援の自動販売機です。 竣工式には私もご案内を受け、出席しました。岩城さんご夫婦の心が詰まったとても素晴らしい施設であり、職員の皆さんの温かい気持ちが感じられるような、細やかな準備が進められていました。

 しかし、やはり彼が心配した通り、なかなか満室にはなりませんでした。必要とする母子はいらっしゃっても、施設自体の認知度が低いことや、入所に対し住居地の自治体の認可がなかなか下りなかったこと等からであるようです。

 しばらく空き部屋の多い状況が続いており、奥様も心を痛めておられておられましたが、徐々に利用者が増えて、1年余り経った2012年7月には、定員の20世帯分が埋まりました。

 母子家庭の増加やDVに対する理解が進んだこと等、時代の変化から、徐々に母子の支援環境が整ってきたのだと思います。

 新聞記事の通り、今ではなくてはならない施設となりました。常に満室の状態のため、新規の希望者に対し断らざるを得ない状況だそうです。

 結果的に考えると、色々な課題を持つ母親が、ストレスで子どもを虐待してしまうこともありますので、そうした悲劇を防ぐためにも、母子生活支援施設はとても必要なものでした。

 先見の明を持って、この施設の立ち上げにご尽力された岩城満さんの崇高な精神や行動力には、本当に頭が下がります。

 「沙羅の木」の名称は、彼が前もって用意していたものです。沙羅の木はナツツバキとも言いますが、真っ白い花を咲かせます。でも、黄緑色の葉っぱが茂る中に咲くため、あまり目立たず、落花して初めて、
「あっ、沙羅の花、今年も咲いてたんだ!」
と気付かせてくれます。また、落下した時、花弁は散らず、枝についている時と同じ形です。
僕が、沙羅の木が好きな理由はこの花の控え目さと美しさだ
と彼は言っていました。

 今もきっと、「沙羅の木」を向こうの国から見守っていらっしゃることと思います。
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ふじいりつ子

Author:ふじいりつ子
山口県議会議員

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